
新築マンションの価格高騰により、マンション取引が新築から中古へとシフトしています。23区では中古マンションの平均価格が1億円を超え、購入しづらい状況になりつつありますが、郊外エリアでは手頃で質のよい物件も多くあります。今回は中古マンションの選び方とリフォーム・リノベーションする際のポイントについて解説します。
目次
1. マンションは新築から中古へ。中古の取引が増える背景
まず新築マンションと中古マンションの取引状況を確認してみましょう
1-1. マンションは今や中古が主流に
国内のマンション市場は、長らく新築中心の取引が続いていました。しかし2016年頃から新築と中古の取引数は拮抗しはじめ、2019年以降は中古の成約数が新築の供給数を上回る状況が続いています。特にここ数年は、新築の供給が減少したことにより、その差が広がっています。

1-2. 中古マンションの取引が増える背景
マンション市場が新築から中古へとシフトしている背景には、いくつかの要因があり、その一つが不動産価格の上昇と供給数の減少です。 2013年の金融緩和以降、地価の上昇により用地の取得が難しくなり、新築の供給戸数が減少していること。加えて、コロナ以降は建築費も上昇し、マンション開発が都心部やターミナル駅など、高価格のエリアに絞られていることも一因となっています。
結果的に、2013年に約56,000戸供給されていた新築マンションが、2024年には23,000戸まで減少し、中古の取引数が増加したことで、価格は2012年から約2倍に上昇しています。

1-3. 今後ますます中古マンションの取引は活況になる
こうした背景から、新築マンションの供給は年々減少し、中古マンションの需要が高まっています。そして、都市部では地価や建築費の高騰で、新築の供給が採算の合う好立地に絞られているため、この傾向はしばらく続くと考えられます。
今回は、これからマンション購入を検討される方向けに、質のよい中古マンションの選び方、リフォーム・リノベーションのポイントなどについて解説します。
2. 新築にはない中古マンションの魅力
中古マンションには、新築にはない様々な魅力があり、最近では「あえて中古を選ぶ」という方も増えています。
2-1. 価格がリーズナブル
中古マンションの魅力のひとつが価格の安さです。エリアや築年数などにもよりますが、同条件の新築と比較すると、だいたい6~7割くらいで購入できるイメージです。その分、ローンの返済額も少なくなりますので、生活にゆとりが生まれ、子どもの教育費や旅行などにお金をかけられるようになります。
2-2. 立地や物件の選択肢が多い
また中古マンションには立地を選べるという大きなメリットがあります。特に駅近などの好立地では、再開発などがない限り新築はあまり供給されませんが、中古の物件は比較的多く流通しています。また「子どもの学区」や「実家の近く」など特定のエリアで探す場合にも物件の選択肢が多く、希望にあった物件が探しやすくなります。
2-3. 現物を確認できて入居までが早い
新築マンションの多くは完成前に販売されるため、モデルルームや図面を見て購入を判断することになります。一方、中古マンションは室内や外観を確認してから購入できるのが大きなメリットです。あわせて、管理状態やどんな人が住んでいるのかも把握しやすいので安心感があります。
2-4. 自分好みにリフォーム・リノベーションできる
中古マンションは室内(専有部分)を自由にリフォーム・リノベーションできます。間取りやデザイン、住設機器などを選びながら、言わば注文住宅のように、自分好みにカスタマイズできるのも大きな魅力のひとつでしょう。
3. 中古マンション購入、物件選びのポイント
ここまで見てきたように、多くの魅力がある中古マンションですが、物件選びを進めるときのポイントを知っておきましょう。
3-1. 立地や利便性、周辺環境
まず、中古マンションの物件選びの大きなポイントは立地と利便性です。通勤・通学に使う路線や最寄り駅までの距離などの交通便、買い物や病院など生活便などをしっかりチェックしましょう。また将来的な再開発の計画なども調べておくとよいと思います。
また子育て世帯であれば、自治体の子育て支援や教育環境なども重要な要素ですので、役所などで確認しておきましょう。
3-2. 建物の築年数と管理状況
マンションの多くはRC(鉄筋コンクリート)造かSRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造で建築されています。このいずれかであれば、耐用年数は50年以上、適切にメンテナンスされていれば100年程度とされており、築年数がやや古くてもそれほど気にする必要はありません。しかし、耐震性という観点から見ると1981年6月以前に建築確認を受けた建物は「旧耐震基準」で設計されている可能性があるので、「耐震基準適合証明書」等の公的な証明がない限り、できるだけ避けた方が無難です。 また「マンションは管理を買え」と言われるくらい管理が重要です。大規模修繕や共用部分の清掃・メンテナンスが定期的におこなわれているか、修繕積立金は十分に積み立てられているかなどを管理組合に確認してみましょう。内見の際には、室内とあわせて外観や植栽、エントランスなどのメンテナンスが行き届いているかをしっかりチェックしましょう
3-3. 価格の妥当性と将来の資産価値
ある程度物件が絞り込まれてきたら、価格の妥当性についても確認しましょう。周辺の類似物件や過去の取引事例と比べて、著しく価格が高くないか。また、ローン返済が無理なく行えるかどうかなどを不動産会社と相談しながらチェックします。
将来の資産価値を見極める上では、地域の人口が増加しているか、若い世代が流入しているか、新しい商業施設が開発されているかなどを確認してみてください。不動産の資産価値は地域の人気や街の発展度合いに大きく左右されます。逆に、高齢化が極端に進んでいる地域や商業施設の撤退が続くような街は、将来的に資産価値が下がりやすい傾向があるため注意が必要です。
3-4. リフォームの自由度
リフォームを前提として購入する場合には、希望するリフォームができるかどうかが重要になります。間取り変更をともなうリフォームの場合には、壁の撤去や移動ができるかどうか、水回りの位置が変更できるかどうかがポイントになります。マンションには構造上どうしても動かせない柱や壁があり、配管の関係で水回りの位置が制約されることもあります。
さらに玄関ドア、サッシ、バルコニーなどは共用部分ですので自由に変更できず、管理規約で使用できる建材や工法が細かく規定されているケースもあります。リフォームが前提の場合は、知識・経験のあるスタッフや建築士に相談しながら、管理規約も十分チェックしておきましょう。
4. 中古マンションを買ってリフォーム・リノベーションするときの注意点
中古マンションを購入してリフォームする場合には、購入前から考慮しておくべきいくつかの注意点があります。
4-1. リフォームの範囲
中古マンションは物件によって状態が違うので、リフォームの範囲も物件ごとに想定しておく必要があります。築浅の物件であればクリーニングや軽い補修だけで十分な場合もありますし、逆に築古の物件であれば内装や配管などをすべて解体して、ゼロから作り直す場合もあります。どの程度のリフォームをおこなうかで費用も大きく変わるため、建築知識のある不動産会社と相談しながら購入を決めていく必要があります。
4-2. 間取りや住宅設備
リフォームで間取りを変更する場合には、前述の通り、建物の構造や配管などを考慮したプランニングが必要です。管理組合との折衝が必要になる場合もあるので、こちらも事前に建築士などの専門家を交えて検討を進めるのがベターです。
また住宅設備は比較的自由に変更できますが、場合によっては、電気容量が足りずIHクッキングヒーターや床暖房が設置できない、外壁にスリーブ(配管用の穴)がないためエアコンが設置できないなどのケースもあり得ます。内見段階からプロと相談しながら検討を進めましょう。
4-3. 断熱性や配管など目に見えない部分のリフォーム
間取りや内装に加えて注意したいのが、断熱性や配管などの住まいの性能に関わる部分です。特に古いマンションでは、サッシが単板(1枚)ガラスのことが多く、コンクリートに直接壁紙や床材を貼って仕上げている物件もあります。こうした物件は断熱性が低く、夏は暑く冬は寒い住み心地の悪い家になりますので、内窓や断熱材など断熱性を高めるリフォームもあわせて検討しましょう。また、配管が老朽化していると詰まりや水漏れの原因となりますが、古いマンションでは配管がコンクリートの中に埋設されているなど、交換できないものもあります。見落としがちなポイントなので注意が必要です。
4-4. 資金計画と補助金
最後にもっとも注意しなければならない資金計画です。決められた予算内で物件探しをする場合、物件の購入費用とリフォームの費用をどのように割り振るのかはとても難しいポイントです。
物件ごとにリフォームの内容が異なり、詳細な見積もりを取っている時間もありませんので、やはりマンションリフォームの経験が豊富なスタッフに同行してもらうのがよいでしょう。内見しながらおおよそのリフォーム費用がわかれば、比較検討しやすくなります。 また、断熱リフォームや子育てリフォームは、国の補助金が利用できます。こうした補助金に関する知識も会社によってまちまちですので、経験が豊富な会社を選ぶようにしましょう。
関連記事:【2025年度 最新版】住宅購入の補助金・税制優遇はどうなる?
5. 「中古マンション+リフォーム」成功の鍵を握るのは会社選び
最後に中古マンションを買ってリフォームする際にどんな会社を選べばよいのかを解説します。
5-1. 不動産と建築、両方の知識と経験のある会社を選ぶ
ここまで見てきたように、「中古マンション+リフォーム」では、不動産だけでなく、建築や管理といったマンション特有の知識や経験が必要になります。
物件の紹介とリフォームを、別々の会社(不動産会社とリフォーム会社)に依頼することもできますが、物件購入後に希望するリフォームができないことが発覚したり、いざ見積もりをしてみたら、当初の想定よりも多額の費用がかかったりというトラブルが起きやすくなります。
こうしたトラブルを避けるためには、物件選びとリフォームをトータルでサポートしてくれるいわゆる「ワンストップ」の会社を選ぶようにしましょう。
5-2. 資金計画やローンに強い会社を選ぶ
ワンストップの会社を選ぶもうひとつのメリットは、資金計画がスムースになることです。資金計画は、ローンの返済額などから総予算を設定し、物件購入とリフォームにそれぞれどのくらいの予算を配分するべきなのか、また住宅ローンはどのように借りるのがベストなのかなどをシミュレーションしていきます。
もし物件紹介とリフォームが別々の会社だと、こうしたシミュレーションを購入者自身が中心となって進めなければなりませんので非常にストレスになります。資金計画から住宅ローンの手続きまでトータルにサポートしてくれる会社を選ぶのが大事なポイントです。
5-3. 補助金や優遇制度に詳しい会社を選ぶ
資金計画を立てる上で、補助金や税制優遇などの活用は非常に重要です。例えば「先進的窓リノベ事業」では、工事費の1/2、最大200万円の補助金が受けられますし、工事の内容によって所得税や固定資産税などの減税制度もあります。こうした制度の多くは申請が必要になりますので、申請方法や必要書類などを熟知した会社を選ぶことが重要です。
ここまで見てきたように、中古マンションには様々な魅力がありますが、物件選びやリフォームにはやや難しい面もあります。ぜひ不動産・リフォームのプロに相談しながら検討を進めていきましょう。
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